漫才:大衆食堂

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、副業で大衆食堂を始めようと思うんだ!
武田:大衆食堂?
三浦:そう! 絶対に成功する自信があるんだ!
武田:ずいぶんな自信だけれど、碧ちゃん、料理得意だっけ?
三浦:ううん。それなりに自炊できるぐらいで得意ではないよ。
武田:碧ちゃん、それなりにレベルの腕前でどこに勝算を見出だしたんだい?
三浦:だって私気づいたんだけれど、人間ご飯食べないと死んじゃうじゃない!
   つまり人類がいる限り私の食堂が潰れることはないの!
武田:それは食にまつわる産業が不滅ということであって、碧ちゃんの商売の保証にはならないよ。
   別段、料理が得意じゃないのにお店出してもすぐ潰れちゃうよ。
三浦:安心してよ! だからこその大衆食堂なの!
武田:だからこそ?
三浦:料理の味はそれなりでも、私の親しみやすくて暖かい人柄でお客さんが途切れないお店にするんだ!
武田:親しみやすくね。でも、本当に人柄でお客さんを呼べる人ならあまり自分からアピールしないと思うんだけれどね。
   それで、親しみやすくって言うけれど具体的にはなにか考えてあるの?
三浦:もちろん! お腹が空いたときだけじゃなくて寂しくなったときとかにふらりと寄れるよう24時間いつでも開けているんだ!
武田:24時間営業するつもりなのかい? 
三浦:それでお店の顔として24時間ずっとお店に立ち続けるんだ! これはすぐに噂になるよ!
武田:だとしたら怪奇現象としてだよ碧ちゃん。ずっとお店にいて、いつ寝たりご飯食べたりするんだい?
三浦:でも、科学が進めば、ご飯を食べなくても眠らなくても平気になるかもしれないでしょ。
武田:碧ちゃん、食が不滅だからって前提で食堂を開くんだよね。食べなくても平気になったら話の土台が崩れちゃうよ。
   そもそも科学技術の発展って先を見据えすぎじゃないかな。
三浦:私のプラン、あとは科学待ちなんだ!
武田:あとの二文字で納めるには気が長すぎるね。
三浦:とにかく、副業で24時間営業の大衆食堂を始めたいの!
武田:副で収まらないよね。
   碧ちゃんがお店を始めたら僕との漫才はいつやれるんだい?
三浦:そうだよね……。一緒にいられる時間なくなっちゃうよね……。
武田:ね、漫才できなくなっちゃうでしょ。
三浦:完君、私と一緒に働いて!
武田:僕が歩み寄るのかい? 碧ちゃんと漫才できるならどこでもいいけれどさ。
三浦:それで12時間交代で働こうね!
武田:完全交代制のシフトなのかい? 漫才やれないじゃないか。
三浦:これで科学を待たなくてもお店が出せるね!
武田:僕の気持ちを無視して出店計画を進めないでね。
   それにね、碧ちゃん。さっき「味はそれなりでも」って言っていたけれど、それなりにも限度はあるからね。
三浦:大丈夫だよ! 目玉商品も考えてあるし!
武田:目玉商品? どんな料理だい?
三浦:これを食べたらこれから先ご飯を食べなくても眠らなくても平気になる定食セット!
武田:さっき碧ちゃんが待ち望んでいたものじゃないか。
三浦:科学を待たずに私が作ろうかと想ってね。
   これを食べれば一緒に働けるし漫才もできるね!
武田:希望が叶ったというには異形すぎるよ。
   大体、そんな現代の科学を超越した食品開発できないでしょ? いったいなにを出す気だい?
三浦:グリコとレッドブル
武田:現代の科学で実現しているよね。
   現代の科学で実現しているし、食事と睡眠が不要になるほどのの力はないし、
   碧ちゃんが開発したものではないし、グリコとレッドブルの組み合わせを定食とは呼びたくないよ。
三浦:これで一億円なんだ!
武田:ボッタクリが過ぎるよ、碧ちゃん。
三浦:でも、これさえ食べれば食事も睡眠もしなくてよくなるんだよ!
武田:その謳い文句が事実だとしたら安いぐらいだけれども。違うでしょ。
三浦:それに、一回食べたお客さんはもう食事に来てくれないから売れば売るほど経営が苦しくなるんだよ。
   それを見越してある程度高くししておかないと。
武田:一食売れただけで左団扇だよ。
三浦:ちなみに200円足すとレッドブルからモンスターに変更できるよ!
武田:碧ちゃん、知ったこっちゃないよ。味噌汁から豚汁にできますみたいなサービスは。
   あと定価一億円の前には誤差ですらないけれど、レッドブルとモンスターの差額として200円は高すぎないかな。
   碧ちゃん、こんなお店絶対無理だよ。すぐ潰れちゃうよ。
三浦:私のお店が潰れる……。つまり人類が滅びちゃうってことなの!?
武田:食の不滅とお店の経営をイコールで結ぶのやめようね。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。