コント:落語刑事

槍沢舞台センターに板付き。パーティ会場。小学校の同窓会が行われている。
 
槍沢:(グラスの飲み物を飲むマイム)はあ、懐かしいなあ……。

栃城:(舞台下手から登場)おお、槍沢!

槍沢:栃城! 久しぶりだな!
栃城:卒業以来だからもう三十年か!? お前、今、なにやってるんだよ!?
槍沢:実はな。俺、刑事やってるんだよ。
栃城:刑事! すごいな!
槍沢:いや、そうでもないよ……。
栃城:すごくないわけないだろ! 刑事だろ刑事!
   まあ、でも刑事なんて刑事ドラマでしか知らないからどんなことしてるのか想像もつかないな。
   やっぱり本当はドラマとは全然違うんだろ?
槍沢:まあな。ああいうのはあくまでもドラマだからな。
栃城:へえ……。じゃあ、実際のところは質問させてもらっていい?
槍沢:ああ。答えられる範囲になるけれどな。なんでも訊いてよ。
栃城:じゃあ、落語家は「お後がよろしいようで」ってあんまり言わないって本当?
槍沢:はあ?
栃城:だから落語家って「お後がよろしいようで」って言って終わらせるイメージがあるじゃん。
   でも、実際の寄席では言う人あんまりいないって噂に聞いてさ、実際はどうなのかなって気になってさ。
槍沢:え? ごめんごめん。俺、刑事ドラマで観たことは実際どうなのかって質問されると思ったんだけれど。
栃城:だから刑事ドラマで観たんだよ「落語刑事(らくごデカ)」
槍沢:「落語刑事」?
栃城:ああ。落語が好きな刑事が落語やりながら事件解決するドラマ。
   主人公の刑事が落語の最後に「お後がよろしいようで」って必ず言うんだよ。
   だからそういうもんだと思ってたんだけれど、実際はどうなの?
槍沢:わかるかよ! なんだその色物ドラマ!
栃城:いやいや、漫才じゃなくて落語だって。
槍沢:は?
栃城:色物って言葉は寄席で漫才とかの落語以外の演目を色つきの字で書いていたことが由来だからな。
   落語の話をしていたのに急に漫才の話をしだすから何事かと思って
槍沢:演芸の話はしてねえよ! ていうか、そんなに寄席に詳しいんだったら俺に訊かなくてもわかるんじゃねえのかよ!
栃城:いやいや、別に詳しくないよ。さっき聞いただけだから。武田って覚えてる?
槍沢:ああ、いつもふざけていてクラスの人気者だった。
栃城:さっき会ったら、あいつ落語家になっててさ。それで話しているうちに教えてもらったんだよ。
槍沢:ちょっと待てちょっと待て! 落語家なら武田に訊いたらそれで終わりだろ!
栃城:訊いたよ。「お後がよろしいようで」って言う人はあんまりいないんだってさ。
   でも、それは落語側の意見であって刑事側の聴かないといけないだろ。
槍沢:ねえんだよ、刑事側の意見は! 落語家がそう言うんならきっとそうなんだろうとしか言えねえよ!
栃城:ああ、そうなんだな!
   で、他にも質問があるんだけれど、「パティシエ刑事(デカ)」ってドラマがあってさ。
槍沢:また色物っぽいタイトルだな。
栃城:洋菓子が好きな刑事がお菓子を作りながら事件を解決するドラマだよ。
槍沢:恐らくだけれど「落語刑事」の兄弟番組だろ。構造が全く一緒なんだよ。
栃城:ドラマで描かれるパティシエの仕事について質問したいんだけれど
槍沢:だから答えようがねえって!
栃城:パティシエって作業の前に三十分絶叫し続けるって本当?
槍沢:はあ?
栃城:主人公がお菓子作るときに「パティシエはみんなする作業だ」って言って三十分間叫び続けるんだけれど、本当かなと思って。
槍沢:本当なわけないだろ! パティシエなんだと思ってるんだよ!
栃城:あ、やらないんだ。
   いや、俺も嘘だろと思ったんだけれど、三十分ずっと叫んでるシーンが流れているからこれだけしつこく流すってことは、
   徹底的にリアリティにこだわってるのかな? って思ってさ。
槍沢:三十分流れ続けたの!? ただ叫んでいるだけのシーンが! どんなドラマだよ!
栃城:初回、九十分スペシャルで三十分間叫んでるから何事かと思ったよ。
槍沢:それ、たぶん脚本間に合わなかったんだよ。
   見切り発車で九十分とっちゃって三十分書けなかったから恐ろしく下手な水増ししたんだよ。
栃城:なるほどな。とにかく、実際にはやらないんだな。
   こういうのって、関わってる人の意見を聴かないとわからないからな。参考になったよ。
槍沢:関わっちゃいないけれど、それが嘘だってことぐらい分かるよ。
栃城:俺もパティシエだけれどやったことないからおかしいなって思ったんだよ。
槍沢:お前パティシエなのかよ! じゃあ訊くまでもなくわかるだろ!
栃城:いや、俺はあくまでもパティシエ側の人間だからさ。そこは刑事側の意見も訊きたいじゃん。
槍沢:だから刑事側の意見はないんだよ! 分かれよ! 色物の付加価値に関しちゃ素人なんだよ! 質問するなよ!
栃城:素人だからって質問しちゃいけないこともないだろ。
   ほら、刑事ドラマでもよく見るじゃん。一般人に捜査のアドバイス求めるの。ああいうのって実際にあるんだろ?
槍沢:あるわけねえだろ。守秘義務なんだと思ってるんだよ。……こういうの!
   こういう刑事ドラマでありがちなシーンは実際どうなのかってことを質問してくれよ!
栃城:え、じゃあ刑事って、一般市民に「拳銃触らせてあげるからハンバーガーおごって」ってよく頼むんだよな!
槍沢:は?
栃城:それから「警察手帳と交換で新品のゲーム機ちょうだい」とか頼むんだよな!
槍沢:お前、今度はどんなドラマ見てるんだよ! 色物の匂いがプンプンするぞ!
栃城:間抜けで失敗ばかりする刑事が主人公の「与太郎刑事(デカ)」ってドラマ。
槍沢:「落語刑事」スピンオフあんのかよ!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

漫才:将来の不安

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、将来が不安なんだ!
武田:碧ちゃん、開始早々でダウナーな話題を切り出さないでね。
三浦:すっごい不安で夜も眠れないんだ!!!
武田:そんな大声で宣言することでもないけれどね。
   将来が不安って具体的にどう不安なんだい? 僕でよければ話を聴くよ。
三浦:あのね、完君。あと何十億年かすると地球は太陽に近づきすぎて飲み込まれてなくなっちゃうって言われているじゃない。
武田:ん?
三浦:いつか地球がなくなっちゃうんだな……って考えると不安で不安で!
武田:碧ちゃん、将来の不安って宇宙規模の話なのかい?
三浦:もし地球がなくなる瞬間に解決策がなにもなかったらそのまま死んじゃうじゃない!
武田:碧ちゃん、よく何十億年先の話を切実に感じられるね。
三浦:そのことを考えたら夜も眠れなくて……。
武田:おそらくだけれど、逆じゃないかな。
   眠れないときにふと宇宙とか壮大なことを考えたら怖くなったのが最初じゃないかな。
三浦:鶏が先か卵が先かってこと?
武田:そういうわけでもないけれどね。
三浦:そういえば鶏と卵どっちが先なんだろう……。
武田:碧ちゃん、漫才中に物思いに耽らないでね。
三浦:そもそも生命ってどうして誕生したんだろう……。
   まずは宇宙が生まれたのが始まりで……。でも宇宙って……。
   どうしよう完君! 宇宙の始まりを考えていたら怖くなっちゃたよ!
武田:碧ちゃん、一人相撲が過ぎるよ。
三浦:将来の不安だけじゃなくて過去への不安も生まれちゃったよ!
武田:あまりないジャンルの不安に襲われなくていいからね。宇宙の始まりと碧ちゃんはなにも関係がないんだから。
三浦:どうしよう! 不安になったせいで今ちっとも眠くならないの!
武田:どうもしなくていいよ。
   とりあえず、漫才中なんだから眠くならないことを悪と捉えないでね。
三浦:ああ、将来だけでも不安なのに!
武田:その将来だけれど、不安にならなくていいからね。
   地球がなくなるときに碧ちゃんはとっくに悠久のなかに過ぎ去っているからね。
三浦:でも、完君! もしかしたら不老不死かもしれないでしょ!
武田:碧ちゃん、どんなもしかしたらだい。
三浦:不老不死のまま何十億年も過ごして地球消滅の瞬間に立ち会うかもしれないじゃない!
武田:碧ちゃん、多分だけれど眠れなさすぎていろいろ妄想しちゃうんだよ。
三浦:それで、地球がなくなっても死ぬことができなくて一人ポツンと宇宙を漂うことになるかもって考えるとこわくてこわくて!
武田:今夜からはこれまで食べた美味しいご飯を思い出しながら寝ようね。
三浦:将来だけじゃなくて不老不死かもしれないっていう現状の不安まで生まれちゃったんだよ!
武田:碧ちゃん、それは絶対にないから安心してね。
三浦:どうしてそう言い切れるの!? 生まれつきそういう体質かもしれないでしょ!
武田:碧ちゃん。碧ちゃんが生まれつき不老不死だったらここまで大きくなってないでしょ。
三浦:完君! これは老いじゃなくて成長!
武田:解釈の問題だよ。
   成長も老化も時間と共に状態が変化するってことは一緒だからね。
三浦:つまり完君は考え方次第で老いることなく、一生成長できるって考えているんだね。
武田:そんな自己啓発的なメッセージは込めていなかったよ。
三浦:一生老いることがないってことは完君は不老ってことだね。
武田:そうはならないよ。
三浦:考え方次第で老いることがないってことは、考え方次第では死ぬこともなくなるよね!
武田:そんなことはないよ。解釈で死を否定したところでただの詭弁じゃないか。
三浦:つまり完君も不老不死なんだね!
武田:碧ちゃん、拡大解釈が過ぎるよ。拡大解釈が過ぎるし、自分が不老不死って考えを改めようね。
三浦:なんだ! 完君も不老不死だったら地球がなくなっても宇宙に漂っても寂しくないからいいや!
武田:碧ちゃん、そう言ってくれるのはありがたいけれど考えが全部間違っているよ。
三浦:ありがとう完君! 完君のおかげで将来の不安がなくなったよ!
武田:碧ちゃん、僕は碧ちゃんの考えを直させられるかが不安になったよ。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。

漫才:大衆食堂

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、副業で大衆食堂を始めようと思うんだ!
武田:大衆食堂?
三浦:そう! 絶対に成功する自信があるんだ!
武田:ずいぶんな自信だけれど、碧ちゃん、料理得意だっけ?
三浦:ううん。それなりに自炊できるぐらいで得意ではないよ。
武田:碧ちゃん、それなりにレベルの腕前でどこに勝算を見出だしたんだい?
三浦:だって私気づいたんだけれど、人間ご飯食べないと死んじゃうじゃない!
   つまり人類がいる限り私の食堂が潰れることはないの!
武田:それは食にまつわる産業が不滅ということであって、碧ちゃんの商売の保証にはならないよ。
   別段、料理が得意じゃないのにお店出してもすぐ潰れちゃうよ。
三浦:安心してよ! だからこその大衆食堂なの!
武田:だからこそ?
三浦:料理の味はそれなりでも、私の親しみやすくて暖かい人柄でお客さんが途切れないお店にするんだ!
武田:親しみやすくね。でも、本当に人柄でお客さんを呼べる人ならあまり自分からアピールしないと思うんだけれどね。
   それで、親しみやすくって言うけれど具体的にはなにか考えてあるの?
三浦:もちろん! お腹が空いたときだけじゃなくて寂しくなったときとかにふらりと寄れるよう24時間いつでも開けているんだ!
武田:24時間営業するつもりなのかい? 
三浦:それでお店の顔として24時間ずっとお店に立ち続けるんだ! これはすぐに噂になるよ!
武田:だとしたら怪奇現象としてだよ碧ちゃん。ずっとお店にいて、いつ寝たりご飯食べたりするんだい?
三浦:でも、科学が進めば、ご飯を食べなくても眠らなくても平気になるかもしれないでしょ。
武田:碧ちゃん、食が不滅だからって前提で食堂を開くんだよね。食べなくても平気になったら話の土台が崩れちゃうよ。
   そもそも科学技術の発展って先を見据えすぎじゃないかな。
三浦:私のプラン、あとは科学待ちなんだ!
武田:あとの二文字で納めるには気が長すぎるね。
三浦:とにかく、副業で24時間営業の大衆食堂を始めたいの!
武田:副で収まらないよね。
   碧ちゃんがお店を始めたら僕との漫才はいつやれるんだい?
三浦:そうだよね……。一緒にいられる時間なくなっちゃうよね……。
武田:ね、漫才できなくなっちゃうでしょ。
三浦:完君、私と一緒に働いて!
武田:僕が歩み寄るのかい? 碧ちゃんと漫才できるならどこでもいいけれどさ。
三浦:それで12時間交代で働こうね!
武田:完全交代制のシフトなのかい? 漫才やれないじゃないか。
三浦:これで科学を待たなくてもお店が出せるね!
武田:僕の気持ちを無視して出店計画を進めないでね。
   それにね、碧ちゃん。さっき「味はそれなりでも」って言っていたけれど、それなりにも限度はあるからね。
三浦:大丈夫だよ! 目玉商品も考えてあるし!
武田:目玉商品? どんな料理だい?
三浦:これを食べたらこれから先ご飯を食べなくても眠らなくても平気になる定食セット!
武田:さっき碧ちゃんが待ち望んでいたものじゃないか。
三浦:科学を待たずに私が作ろうかと想ってね。
   これを食べれば一緒に働けるし漫才もできるね!
武田:希望が叶ったというには異形すぎるよ。
   大体、そんな現代の科学を超越した食品開発できないでしょ? いったいなにを出す気だい?
三浦:グリコとレッドブル
武田:現代の科学で実現しているよね。
   現代の科学で実現しているし、食事と睡眠が不要になるほどのの力はないし、
   碧ちゃんが開発したものではないし、グリコとレッドブルの組み合わせを定食とは呼びたくないよ。
三浦:これで一億円なんだ!
武田:ボッタクリが過ぎるよ、碧ちゃん。
三浦:でも、これさえ食べれば食事も睡眠もしなくてよくなるんだよ!
武田:その謳い文句が事実だとしたら安いぐらいだけれども。違うでしょ。
三浦:それに、一回食べたお客さんはもう食事に来てくれないから売れば売るほど経営が苦しくなるんだよ。
   それを見越してある程度高くししておかないと。
武田:一食売れただけで左団扇だよ。
三浦:ちなみに200円足すとレッドブルからモンスターに変更できるよ!
武田:碧ちゃん、知ったこっちゃないよ。味噌汁から豚汁にできますみたいなサービスは。
   あと定価一億円の前には誤差ですらないけれど、レッドブルとモンスターの差額として200円は高すぎないかな。
   碧ちゃん、こんなお店絶対無理だよ。すぐ潰れちゃうよ。
三浦:私のお店が潰れる……。つまり人類が滅びちゃうってことなの!?
武田:食の不滅とお店の経営をイコールで結ぶのやめようね。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。

漫才:野球観戦

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、野球観戦しようと思うんだ!
武田:野球観戦?
三浦:そう! 新しい趣味を作ろうと思ってね。
武田:なるほどね。
三浦:それで、完君に質問があるんだけれど、野球場っていくらぐらいで建設できるのかな?
武田:ちょっと待ってね、碧ちゃん。野球場? 建設?
三浦:うん! 野球場を建てるんだ!
武田:ごめん、碧ちゃん。理解が追いつかない。なんでそんな大それたことを企てたんだい?
三浦:やっぱり趣味を始めるなら道具にはこだわるべきだからね!
武田:道具と捉えるには大きすぎるよ碧ちゃん。土地込みの道具ってないよね。
三浦:観客席にはプールもつけたいんだ!
武田:メジャー仕様のオプションまで欲張らないでね。
   さっきの疑問に答えるけれど、球場を作ろうだなんて何十億円とかかるし、土地込みとなると百億円でも足りないよ。
三浦:そっか……お仕事頑張らないとね!
武田:払いきれるつもりなんだね。
   仕事を頑張ることに異存はないけれど、野球観戦趣味にするのに球場建てる必要ないからね。
   だって、ボウリングが趣味の人ってボウリング場建てないでしょ?
三浦:あ、そうだね。
武田:気づいてくれてよかったよ。
三浦:ボウリングが趣味の人がマイボールを持つみたいにマイチームを持てばいいのね!
武田:これは例の選択を間違えた僕が悪いね。チーム?
三浦:そう! やっぱり道具にはこだわりたいでしょ!
武田:選手を道具と考えるのやめようね。傲慢なオーナーになっちゃうからね。
   仮に道具だとしても、オリジナルで作るものじゃないからね、碧ちゃん。
   映画鑑賞が趣味の人で自分で撮る人いないでしょ?
三浦:……タランティーノは?
武田:これも例の出し方が悪かったね。
   野球だったら既存のチームを応援すればいいからね。
三浦:じゃあ、どこのチームを応援したらいいかな?
武田:どこでも好きなチームを応援すればいいけれど、碧ちゃんって仙台出身だよね。
三浦:そうだよ。
武田:じゃあ、イーグルスがいいんじゃないかな。地元だし。
三浦:そっか。じゃあ、イーグルスにするね!
武田:今度からイーグルスの試合を応援するんだね。
三浦:イーグルスの選手を呼ぶね!
武田:呼ぶ?
三浦:うん! イーグルスの選手を呼ぶね!
武田:碧ちゃんのところにかい?
三浦:うん!
武田:それはイーグルスの選手を呼んで自分だけのために試合をしてもらおうってことかい?
三浦:あー別に試合はしなくてもいいかな。野球が観られればそれで満足だし。
武田:試合をしないのに野球?
三浦:うん! 野球が見たいんだ!
武田:もしかして、碧ちゃん。野球選手がする行動はすべて野球と呼ぶ概念を持っているのかな?
   そんな力士の作るものはちゃんこみたいな方程式は存在しないからね。
   じゃあ、碧ちゃんはイーグルスの選手を呼び集めてなにをしてもらう気だい?
三浦:部屋の模様替えを手伝ってもらおうかな。
武田:選手を体力としてしか見ていないじゃないか。
三浦:ちゃんと日給として一万二千円払うよ!
武田:完全に日払いのアルバイトじゃないか。
三浦:あ、そうだ! 一緒に美術館にも行きたい!
武田:美術館? 選手と一緒にかい?
三浦:うん。十人以上で団体割引が適用されるんだ!
武田:今度は数としてしか見ていないね。
   どんどん野球選手としての個性を無視しているよ。
三浦:興味がある展示があるから行きたいんだ!
武田:野球観戦するまでもなく新しい趣味見つけていないかな?
   あのね碧ちゃん、趣味にしたいなら野球に興味があるんだよね。
   それなら失礼なこと言わないでちゃんと野球の試合を観に行こうよ。
三浦:わかったよ。じゃあ、今度一緒に観に行こう!
   私はオリジナルの球団マスコット考えてくるから!
武田:そこも既製品で大丈夫だよ。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。

漫才:田舎暮らし

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、この前、芸能人が田舎を訪ねる番組を見たんだ。
武田:田舎の人と触れ合う旅番組だね。
三浦:それで、こういう番組に出たいなって思ったんだ。
武田:なるほどね。お笑いを頑張っていれば出る機会もあるかもしれないね。
三浦:だから、今度移住するんだ!
武田:住民としてなのかい? 旅番組に出る方法って?
三浦:それで、完君も一緒に田舎に来てほしいんだ!
武田:僕も行くのかい?
三浦:書類は持ってきたからこのあと区役所に行こうね!
武田:行動の早さは評価してあげたいけれどね。まず、どうして僕も行くのか説明してもらえないかな?
三浦:だって、田舎の人ってよそから来た人には冷たいっていうでしょ? だから近くに仲間がいてほしくてね。
武田:まあ、コミュニティのつながりが強い分、外から来た人には厳しいところはあるかもしれないけれども。
三浦:田舎について勉強したんだけれど、恐いんだよ! 命にかかわるんだから!
武田:碧ちゃん、どんな勉強をしたらそんな偏見が生まれるのかな?
三浦:だって、田舎って手鞠歌に見立てられたり、落武者の霊を名乗る人が惨殺していくんでしょ!?
武田:碧ちゃん、参考文献教えてもらえるかな? おそらくだけれど横溝正史の小説を読んでいるよね。
三浦:あー、小説は読んでないかな。市川崑監督の映画はたくさん観たけれど。
武田:碧ちゃんは観てから読むタイプなんだね。碧ちゃんが観たのは全部フィクションだから安心して。
三浦:でも、フィクションを通して現実を描くのが表現者の使命じゃないの?
武田:碧ちゃん。今は芸術論をぶつ場合じゃないよ。
   というかね、そんなに恐がっているなら田舎に移住しない方がよくないかな。
三浦:旅番組に出たいの! そして芸能人をもてなしたいの!
武田:旅番組への憧れが強いんだね。
三浦:事件に巻き込まれなくても、冷たくされたら不安だから
武田:そうだとしたら僕一人が着いていってもしょうがないと思うんだけれど。
三浦:完君だけじゃないよ。三十人ぐらいに声かけているもん。
武田:もはやコミューンじゃないか。三十人だって?
三浦:これだけ集まれば村の人に心を閉ざされても平気だね!
武田:碧ちゃん、正体不明の大所帯が訪れたら。そりゃ村の人も心を閉ざすよ。
三浦:これで旅番組に出られるね!
武田:碧ちゃん、テレビが来るとしても報道だよ。
   謎の集団が占拠してなにをするつもりだって思われるよ。
三浦:別に変なことなんてしないよ。みんなで遊んで田舎を満喫するだけだよ!
武田:遊びってどんな?
三浦:人狼
武田:碧ちゃん、田舎を生かそうよ。別に東京でも楽しめるものじゃないか。
三浦:完君はわかってないなあ。絶対、田舎でやった方が楽しめるよ!
武田:人狼は場所によってクオリティは変わらないよね。
三浦:人狼をやっていると「私は村人です」って宣言するでしょ。
   そのときに「ああ……。名実ともに村人なんだなあ……」ってしみじみ思えるんだ!
武田:他の役職やる人のことも考えようよ碧ちゃん。
   あと、追放されているのにしみじみしないでね。
三浦:他の役職?
武田:あるでしょ、人狼だったら占い師とか番人とか。
三浦:いないよ。
   私がやるのはみんなで輪になって「私は村人です」って言っていく人狼なんだ!
武田:碧ちゃん、人狼じゃないよ。
三浦:そういうローカルルールでやるんだ!
武田:ガラパゴス化が激しすぎるね。確認するけれど、そのゲームに人狼はいるのかな?
三浦:いないよ!
武田:平和な村なんだね。人狼だとしたら、誰かが死なないと始まらないからね。
三浦:……誰かが死なないと? やっぱり田舎は血が流れるの!?
武田:そういうことじゃないから。人狼は手鞠歌に見立てたりしないからね。
   仮にだよ碧ちゃん。旅番組が来たとしてレポーターさんはなんて言うと思うんだい?
三浦:「日本の原風景がありますね」
武田:碧ちゃん、理想論が過ぎるよ。日本のスタートラインはボドゲカフェではないからね。
三浦:テレビもパソコンも使わないでみんなで輪になってわいわい遊ぶ。田舎らしい風景じゃない!
武田:外観はともかく遊びの内容がおかしいんだよ。
三浦:そんなことないよ!
武田:じゃ、碧ちゃんの考える日本の原風景を見せてくれるかな。
三浦:「これから人狼を始めます。私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村人です」
武田:碧ちゃん、やっぱり来るとしても報道だよ。
   申し訳ないけれど怪しげな宗教としか映らないよ。
三浦:「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村長です」
武田:村長?
三浦:村長さんも一緒に人狼やれたらいいなって。
武田:取り込まれてくれるかな? 行政の長が。
三浦:「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私はジョニー・デップです」
武田:レポーターは高田純次さんなのかな?
三浦:こういう風に旅番組に出たいから一緒に田舎に行こう!
武田:ごめん、碧ちゃん。村人と口にし続けるだけのコミューンには加わりたくないし、なにより東京で漫才やりたい。
三浦:……完君の気持ちはわかったよ。田舎には私ひとりで行くね!
   だから完君、いつか旅番組の私の村にレポーターで来て再会しようね!
武田:本当にわかってくれたのかな? ずっと東京で漫才やろうって頼んでいるんだけれど。
三浦:それで一緒に人狼やろう!
   「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は村人です」
   「私は武田完の最高の相方です」
   「私は三浦碧の最高の相方です」って言い合おうね!
武田:厚顔無恥が過ぎるよ碧ちゃん。
   それにそこまで言うなら東京で漫才頑張ろうね。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。

漫才:宅配の人

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! ちょっと相談に乗ってほしいんだ!
武田:いいけれど、いったいなんだい?
三浦:私、この夏にやり残したことがあって、来年の夏こそはちゃんとできるようアドバイスしてほしいんだ。
武田:なるほどね。それでやり残したことってなにかな?
三浦:宅配の人に優しくしたいの!
武田:宅配の人……?
三浦:この夏何回か荷物が届いたんだけれど、暑いなかを汗だくになって届けてくれた宅配の人をなにも労えなくて悪いことしちゃったなって思っててね。
   だから来年の夏こそはちゃんと感謝の気持ちを込めて宅配の人に優しくしたいの!
武田:碧ちゃん。心がけは立派だけれど宅配の人を労うのは夏だけに限定にしなくていいと思うよ。
三浦:そうなんだけれどね、でも夏場は特に大変でしょ? だから夏は特に心を込めて優しくしたいの!
   完君、どう優しくすればいいか一緒に考えて!
武田:普通に「ありがとうございます」って言葉にすればいいだけじゃないかな。
三浦:言葉だけじゃなくてもっと違う形で示したいの!
   でも、仕事中に色々話しかけたら迷惑じゃないかなって考えちゃって。
武田:考えすぎじゃないかな。
三浦:それに、宅配の人って仕事がたくさんつまって時間がないから「お礼に夜通し酒盛りしましょう!」って誘っても困っちゃうでしょ。
武田:知らない人とサシで酒盛りしようって言われて困ることに仕事量の多寡は関係ないよ碧ちゃん。
三浦:私だけじゃなくて友達にたくさん来てもらうよ!
武田:碧ちゃん、もっとありがた迷惑だよ。知らない集団に放り込まれても居心地悪いだけだからね。
   言葉だけじゃ足りないなら冷たいお茶とかでよくないかな。
三浦:じゃあ、宅配の人が来たら「お茶飲みに行きません」って言えばいいんだね!
武田:碧ちゃん、時間がかかっちゃうよ。
   ここが一番の論点ではないけれど、さっき時間のなさを気にしていたからあえてここから指摘するけれども。
三浦:でも家の近くの喫茶店なんだよ!
武田:いくら近かろうとも外に行くんだったら場所と飲み物の種類が変わっただけで酒盛りと同じ問題点を抱えているよ。
   缶のお茶買っておいて冷蔵庫で冷やして渡してあげようよ。そうしたら宅配の人も早く帰って次の現場行けるでしょ。
三浦:えーと、じゃあ宅配の人が来たら「ぶぶ漬けいかがどす?」って言えばいいの?
武田:早く帰ってほしいが出すぎているよ、碧ちゃん。別に迷惑だからってわけじゃないからご飯と一緒にする必要ないからね。
三浦:でも、お茶だけだとスタミナが切れちゃうかもしれないから……。
   よし! 注文しておくからピザを食べてもらうね!
武田:碧ちゃん、無間地獄に足を踏み入れてしまったよ。
   この際、仕事中のピザの差し入れの是非は置くとしてピザ注文するってそのピザを注文した人も労わないといけなくなるじゃないか。
三浦:ピザの人には天ぷらそばを食べてもらうよ。
武田:碧ちゃん、すでに別の店屋物を取る心積もりなのかい?
三浦:おそば屋さんにはシェイクを飲んでもらうし……
武田:Uber Eatsまで利用する気かい?
三浦:Uber Eatsの人にはアイドルのコンサートのチケットをあげるんだ!
武田:碧ちゃん、ひょっとしてだけれどよろしくないオークションを利用していないかな?
   流れからして転売して手にいれたチケットを次の宅配の人に渡しているよね。
三浦:ううん。コンサートのチケットは私が買っていたものをあげるんだ。
武田:碧ちゃん、法則がわからないよ。
三浦:最初に頼む人には渡せるものがないから、そのとき持っているものを使うしかないかなって。
武田:碧ちゃん、だったら最後の宅配の人までなにも頼む必要がないよね。
   中継ぎを介したせいでコンサートのチケットかシェイクかっていうギャンブル性の高いくじ引きになっちゃっているからね。
三浦:完君のおかげでどうすれば宅配の人に優しくできるかわかったよ!
   あれ、でもこのシミュレーション通りにするにはチケットが必要なんだよね……。
   完君! 宅配の人に優しくするためにどうやったらプラチナチケットが取れるか教えて!
武田:碧ちゃん、なにも考えないでお礼だけ言おうね。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。

漫才:心霊スポット

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 肝試しってロマンチックだよね!
武田:ごめんね、碧ちゃん。だよねと言われても共感できないよ。肝試しがロマンチックってどういうことだい?
三浦:暗い闇の中を肩を寄せ合い手に手を取って歩いていく……。ロマンチックでしょ!
武田:情景だけ切り取ればそれっぽく見えるけれど、実際はホラーと隣り合わせだからね。
三浦:それに二人で肝試しをすることで距離が縮まったり恋が生まれるって言うじゃない!
武田:吊り橋効果ってことかい?
三浦:そう! ね、ロマンチックなイベントでしょ!
武田:仮にロマンチックの要素があったとしても、副産物じゃないかな。
三浦:それで、私はもっと恋が生まれるような心霊スポットがあればいいと思うんだ。
武田:心霊スポットなのに恋が生まれるのかい?
三浦:うん! 心霊スポットを恋に効くパワースポットとして利用してもらいたいんだ!
武田:心霊現象に縁起のよさ加えようがないと思うんだけれどね。
三浦:もしあったら絶対に人気のスポットになるよね!
武田:碧ちゃん、心霊と恋愛成就は客層被らないと思うよ。
三浦:じゃあ、二倍来てくれるね!
武田:碧ちゃん、なぜ両獲りできると踏めたんだい? 双方が敬遠する未来しか見えないよ。
   そもそもそんな都合のいい心霊スポットないと思うんだけれど。
三浦:だよねー。だから、恋に効く心霊スポットを手作りしようと思うんだ。
武田:作ろうと思って作るものじゃないよ碧ちゃん。というか、え? 手作り?
三浦:そう! 手作りの心霊スポット!
武田:それは犯行予告だよ碧ちゃん。
   幽霊が出るってどういうことかわかっているのかい?
三浦:別に幽霊が出なくても心霊スポットは作れるよ。
   その場所に誰かの強い想いが残ればいいんだから。
武田:残留思念とかそういうことかな?
三浦:そうそう! 心霊スポットでは呪いや怨念が強く残ることで、訪れた人を怖がらせる心霊現象が起きるでしょ。
   それと同じように「恋をさせたい」って強い想いが残ることで訪れた二人を結びつける心霊現象が起こるんだ!
武田:大きく分けて二つのポイントで疑問符があるからひとつずつ訊いていくね。
   どうやって「恋をさせたい」って想いを残させるつもりだい?
三浦:縁結びが趣味の人を心霊スポットの予定地に集めて、「誰でもいいから恋させたい!」って想ってもらうんだ!
武田:それで残留思念が残るかはこの際譲るとして、縁結びが趣味の人なんてどうやって見つけるつもりだい?
三浦:とりあえず、世話焼き好きの親戚のおばさんに声をかけてみるよ。
武田:碧ちゃん、闇雲ではない。
   いくら世話を焼くのが好きでも親戚のおばさんは身の回りの人しかターゲットにしないよ。
三浦:でも、世話好きの親戚のおばさんの世話好きの親戚のおばさんの世話好きの親戚のおばさんの……って広げていけば広がっていくよ!
武田:おせっかいって累乗していくものではないからね。結局、一族の範囲しか広がらないからね。
三浦:じゃあ、婚活パーティに行って探すよ!
武田:世話好きの人をかい?
三浦:うん! だって婚活パーティに行けば、参加者同士を結びつけるために世話好きの人がこっそりさんかしているかもしれないでしょ!
武田:存在するかな? そんな碧ちゃんの都合にいい趣味の人。
   ためらいなく切り捨てていいかもしれなさだと思うんだけれど。
三浦:世話好きの人を集めたら「恋させたい!」、「結びつけたい!」って強く想わせるんだ!
武田:簡単に言うけれど、どうやって残留思念になるほど想いを残させるんだい。
三浦:少女漫画を読んでもらうんだ!
武田:あのね、碧ちゃん……。
三浦:完君の言いたいことはわかってるよ。
   少女漫画を読んで「恋したい」って思うことはあっても「恋させたい」って思うことはあるのかが心配なんだよね?
武田:受動性の問題じゃなくてね。
三浦:でも、奥手で純情な二人が少しずつ近づいていくもどかしくて甘酸っぱいラブストーリーを読んだら
   「恋させたい!」、「結びつけたい」って思うんだからね!
武田:ごめんね、碧ちゃん。今は面白い少女漫画の話をしたいんじゃないんだ。
   あのさ、碧ちゃん。碧ちゃんが作りたいのは心霊スポットなんだよね? 場所はどこを予定しているのかな?
三浦:山奥の廃トンネルだよ!
武田:なるかな? 山奥の廃トンネルに連れてこられて漫画読まされて「恋させたい」って気持ちに。
三浦:すっごくいい漫画なんだよ!
武田:その熱量で語らせる時点でどれだけすぐれた作品なのかは伝わるけれども。
   漫画を楽しむには環境が不穏だからね。このシチュエーションだとポテンシャルを発揮できるか不安だよ。
三浦:とにかく、こうすれば肝キュンな心霊スポットが誕生するの!
武田:胸キュンみたいに言わないでね。
三浦:そして恋と心霊の両方から話題になってにぎわうの!
武田:心霊スポットにおいて「にぎわう」って言葉が似つかわしいかは疑問だけれどね。
三浦:今まで怪談といえば「怖いなー怖いなー」だったのが「恋したいなー恋したいなー」に変わるんだから!
武田:変わるかな? 恋したいが怖いなに取って変わるって相当なジャイアントキリングだよ。
三浦:稲川淳二さんも稲川キュン死に改名するんだから!
武田:碧ちゃん、そこまで行くと稲川さんが血迷うかどうかの問題になってくるよ。
   それで碧ちゃん。さっき棚上げした疑問点に移るけれど、肝試しに来た二人を結びつける心霊現象って。
三浦:肝試しで廃トンネルに入っていくとどこからともなく
   「あ、あの二人すっごくいい雰囲気!」
   「本当、もう付き合っちゃえばいいのにー!」って声が聴こえてくるの。
武田:碧ちゃん、恐怖の判定勝ちだよ。冷やかすだけて恋の要素が薄すぎないかな?
三浦:それから前から血まみれの男の子が走ってきて……
武田:碧ちゃん、恐怖のTKO勝ちだよ。そこからロマンスまで持っていける?
三浦:「あ、あの二人すっごくいい雰囲気! もう付き合っちゃえばいいのにー!って叫んで去っていくの!
武田:碧ちゃん、計量の時点で恐怖の勝ちだよ。恋の要素冷やかししかないのかい?
   ダメだよ碧ちゃん。こんな心霊スポットじゃ誰も結ばれないよ。
三浦:そんな! 普通の心霊スポットとしてしか繁盛しないの?
武田:そっちの願いも望み薄だよ。繁盛という言い方が正しいかわからないけれど。
三浦:あーあ……。この心霊スポットが成功したら立川談志師匠が今後立川キュン死の名で後世に伝わっていくと思ったのに。
武田:碧ちゃん、落語の名跡をなんだと思っているんだい。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。