漫才:将来の不安

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、将来が不安なんだ!
武田:碧ちゃん、開始早々でダウナーな話題を切り出さないでね。
三浦:すっごい不安で夜も眠れないんだ!!!
武田:そんな大声で宣言することでもないけれどね。
   将来が不安って具体的にどう不安なんだい? 僕でよければ話を聴くよ。
三浦:あのね、完君。あと何十億年かすると地球は太陽に近づきすぎて飲み込まれてなくなっちゃうって言われているじゃない。
武田:ん?
三浦:いつか地球がなくなっちゃうんだな……って考えると不安で不安で!
武田:碧ちゃん、将来の不安って宇宙規模の話なのかい?
三浦:もし地球がなくなる瞬間に解決策がなにもなかったらそのまま死んじゃうじゃない!
武田:碧ちゃん、よく何十億年先の話を切実に感じられるね。
三浦:そのことを考えたら夜も眠れなくて……。
武田:おそらくだけれど、逆じゃないかな。
   眠れないときにふと宇宙とか壮大なことを考えたら怖くなったのが最初じゃないかな。
三浦:鶏が先か卵が先かってこと?
武田:そういうわけでもないけれどね。
三浦:そういえば鶏と卵どっちが先なんだろう……。
武田:碧ちゃん、漫才中に物思いに耽らないでね。
三浦:そもそも生命ってどうして誕生したんだろう……。
   まずは宇宙が生まれたのが始まりで……。でも宇宙って……。
   どうしよう完君! 宇宙の始まりを考えていたら怖くなっちゃたよ!
武田:碧ちゃん、一人相撲が過ぎるよ。
三浦:将来の不安だけじゃなくて過去への不安も生まれちゃったよ!
武田:あまりないジャンルの不安に襲われなくていいからね。宇宙の始まりと碧ちゃんはなにも関係がないんだから。
三浦:どうしよう! 不安になったせいで今ちっとも眠くならないの!
武田:どうもしなくていいよ。
   とりあえず、漫才中なんだから眠くならないことを悪と捉えないでね。
三浦:ああ、将来だけでも不安なのに!
武田:その将来だけれど、不安にならなくていいからね。
   地球がなくなるときに碧ちゃんはとっくに悠久のなかに過ぎ去っているからね。
三浦:でも、完君! もしかしたら不老不死かもしれないでしょ!
武田:碧ちゃん、どんなもしかしたらだい。
三浦:不老不死のまま何十億年も過ごして地球消滅の瞬間に立ち会うかもしれないじゃない!
武田:碧ちゃん、多分だけれど眠れなさすぎていろいろ妄想しちゃうんだよ。
三浦:それで、地球がなくなっても死ぬことができなくて一人ポツンと宇宙を漂うことになるかもって考えるとこわくてこわくて!
武田:今夜からはこれまで食べた美味しいご飯を思い出しながら寝ようね。
三浦:将来だけじゃなくて不老不死かもしれないっていう現状の不安まで生まれちゃったんだよ!
武田:碧ちゃん、それは絶対にないから安心してね。
三浦:どうしてそう言い切れるの!? 生まれつきそういう体質かもしれないでしょ!
武田:碧ちゃん。碧ちゃんが生まれつき不老不死だったらここまで大きくなってないでしょ。
三浦:完君! これは老いじゃなくて成長!
武田:解釈の問題だよ。
   成長も老化も時間と共に状態が変化するってことは一緒だからね。
三浦:つまり完君は考え方次第で老いることなく、一生成長できるって考えているんだね。
武田:そんな自己啓発的なメッセージは込めていなかったよ。
三浦:一生老いることがないってことは完君は不老ってことだね。
武田:そうはならないよ。
三浦:考え方次第で老いることがないってことは、考え方次第では死ぬこともなくなるよね!
武田:そんなことはないよ。解釈で死を否定したところでただの詭弁じゃないか。
三浦:つまり完君も不老不死なんだね!
武田:碧ちゃん、拡大解釈が過ぎるよ。拡大解釈が過ぎるし、自分が不老不死って考えを改めようね。
三浦:なんだ! 完君も不老不死だったら地球がなくなっても宇宙に漂っても寂しくないからいいや!
武田:碧ちゃん、そう言ってくれるのはありがたいけれど考えが全部間違っているよ。
三浦:ありがとう完君! 完君のおかげで将来の不安がなくなったよ!
武田:碧ちゃん、僕は碧ちゃんの考えを直させられるかが不安になったよ。いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。