漫才:政治家

武田:どうも、よろしくお願いします。
   まず最初に自己紹介しますと僕が武田完で隣にいるのが三浦碧。
   二人合わせてENDGREENです。よろしくお願いします。
三浦:ねえ、ねえ完君、完君。話があるんだけどさ! 私、完君にお願いしたいことがあるんだ!
武田:お願い?
三浦:うん。でも、その前に完君に確認したいことがあってね。
武田:なんだい一体? 僕にできることならなんでもやるけれど。
三浦:確認しておきたいんだけれど、完君って支持政党ってある?
武田:碧ちゃん。いったいなにをお願いするつもりなんだい? 想像よりもナイーブな話題のようだけれど。
三浦:支持政党があると頼みづらいお願いだからね。
武田:碧ちゃんには申し訳ないけれど、家訓で政治と宗教と儲け話の誘いには近づかないようにしているんだよ。
   まあ、一応答えておくと無党派層だけれどさ。
三浦:お願い完君! 次の選挙に出馬してほしいんだ!
武田:まさか当事者として頼まれるとは思わなかったよ。
   碧ちゃん、出馬ってどういうことかな?
三浦:お願い! 完君に政治家になってほしいの!
武田:お願いされても政治家になりたくないし、そもそも出馬したところで絶対受からないよ。
三浦:完君! 絶対って言うけれど、出ないと当選確率は0%なんだよ!
武田:碧ちゃん、宝くじを買うときの精神論で言われても困るよ。
三浦:出馬さえすればあとは受かるか受からないかだから当選確率は50%だよ!
武田:ごまかされないからね、碧ちゃん。

   そういう理屈は島本和彦が描くような熱さがあってはじめて説得力が生まれるものだから。
三浦:じゃあ、当選できるよう総理大臣になってから出馬して!
武田:システム上無理だよ、碧ちゃん。そんなボトルシップみたいにはいかないからね。
三浦:総理になったらどれくらいの確率で当選できるかわかる? 受かるか受からないかだから50%だよ!
武田:この場合の精神論は逆効果だよ碧ちゃん。
   現総理の当選確率が五分五分って相当な逆風吹いていないと弾き出されないからね。
   そもそも、なんで僕に政治家になってほしいんだい?
三浦:実は、私、政治家になりたいんだ。
武田:え? 碧ちゃんが政治家になりたいの?
三浦:そう。
武田:それなのに僕が出馬するのかい?
三浦:だってさ、私には地盤も看板も鞄もないじゃない。

   だから完君に政治家になってもらって偉い人に紹介してほしいの!
武田:コネでどうこうなる問題ではないよ。

   というか、偉い人って誰に紹介すればいいんだい?
三浦:それはもちろん有権者の皆様だよ!
武田:ちゃんとした倫理観はあるんだね。
   それで碧ちゃんはなんで政治家になりたいの?
三浦:最近、チャップリンの「独裁者」を観たんだ。
武田:名作映画だね。
三浦:それで思ったんだ。政治家になりたいなって!
武田:碧ちゃん、どこに憧れているんだい?
三浦:だって有名な政治家になったら偉大なコメディアンに題材にしてもらえるんだよ!
武田:風刺として扱われることを良きこととして捉えないでね。
三浦:偉大なコメディアンだよ! 偉大なコメディアン!
武田:それからね碧ちゃん。

   力不足は承知で言うけれど、僕らもこうやって漫才をやっているんだから偉大なコメディアンになる方を目指そうよ。
三浦:じゃあ、私は有名な政治家になるから完君は偉大なコメディアンを目指そうね!
武田:碧ちゃん、返す刀で袂を分かとうとしないでよ。一緒に頑張りたいんだから。
   そもそも政治家になりたいって言うけれど、碧ちゃん政治のことわからないでしょ?
三浦:大丈夫だよ! twitterで勉強したもん!
武田:こっちも返す刀でなんだけれど、twitterで政治を勉強しただなんていよいよ距離を置かせてもらうよ、碧ちゃん。
   正しい正しくない以前に極端な意見がはびこりすぎているからね。
三浦:チョコミン党ってところが人気なんでしょ。
武田:碧ちゃん、おそらくだけれど政治関係の人は誰もフォローしてないよね。
三浦:そこから出馬しようと思うんだ!
武田:碧ちゃん、不可能だよ。チョコミン党にはこの国を変えようって意思はないからね。
   いったい、チョコミン党はどんな政策を掲げていると思うんだい?
三浦:「チョコミン」って国民に響きがにているから国民のことを考えた政策かな。
武田:碧ちゃん、出馬する以上は国民のことを考えた政策は絶対条件だよ。
三浦:よし! 今から出馬したつもりで演説するからちゃんとできているかチェックしてね!
武田:勝手に先走らないでね碧ちゃん。相方ひとりの声に耳を傾けないのに国民の声に耳を傾けられるのかい?
三浦:「この度、チョコミン党から立候補した三浦碧です!」
武田:碧ちゃん、党名の段階でチェックを入れたいよ。
三浦:「我々、チョコミン党はチョコミントのような政治を目指します!」
武田:でも、とりあえずスリーストライクまでは見守るね。
三浦:「チョコミントはさわやか。私たちも国会にさわやかな風を吹かせます!」
   「チョコミントは眠気ざましにピッタリ! チョコミントの力で国会で居眠りしません!」
   「チョコミントはコンビニで大人気。コンビニは庶民感覚そのもの。庶民感覚がわかる政治をします!」
   どう、完君! 私の演説よかったでしょ!
武田:全体的に初心者のなぞかけだったよ。

   スリーストライクで止めるつもりがその間もなくスリーアウトになってしまったよ。
三浦:そうかなあ……。
武田:まず、「さわやかな風」はスローガンならともかく公約だと抽象的すぎて無言と同義だよ。
   そして、職場で居眠りしないと高らかに謳われても不安になるよ。
   最後に「さよなら三角」みたいにジョイントしていたけれど、チョコミントのお菓子がコンビニで人気なことと庶民感覚がわかるかどうかは別問題だよ。
三浦:でも、庶民感覚はよくわかるよ!
武田:実際に庶民だからね。ストレートにアピールすればいいのにチョコミントを乗せるから伝わらなくなっているよ。
三浦:うーん……。チョコミントのイメージを大切にしたいんだけれどな。
武田:あと、今の演説ってミント単体で成立するよね。
三浦:あ、そうか。チョコの要素も入れないとね!
武田:だからって無理して入れてほしいわけじゃないよ。
三浦:「さて、皆さん。政策の話もいいですが、チョコレートの話をしましょう!」
武田:碧ちゃん、雑談に切り替わる演説ってなかなかないよ。
三浦:「チョコレートといえば様々なチョコレートがあります。
    最近ではカカオの含有率が高いものもあり、中にはカカオ100%というものもあります。さて%といえば消費税。消費税もチョコレートと同じく100%にします!」
武田:無理して入れようとするから。いきなり国民を無視した政策を掲げているじゃないか。
三浦:「さて、皆さん。チョコレートといえば様々なチョコレートがあります。

    最近ではカカオの含有率が高いものもあり、中にはカカオ100%というものもあります」
武田:碧ちゃん、チョコレートの特徴はカカオの含有率だけじゃないよ。
三浦:「さて%といえば支持率。私たちは支持率は100%を目指します。いえ、100%以外許しません! どんな手を使ってでも100%にさせます!」
武田:碧ちゃん、本当に独裁者になろうとしているよ。
三浦:「さて、皆さん。チョコレートの話をしましょう」
武田:これでいい演説ができてもチョコレートとミントが分離していることに変わりはないんだけれどね。
三浦:「チョコレートを用いたゲームはたくさんあります!」
武田:そうかな? パッとは出てこないけれど。
三浦:「たとえばグミ・チョコレート・パイン
武田:碧ちゃん、そういう用い方なのかい?
三浦:「チョキで勝ったらチ・ヨ・コ・レ・イ・トで六文字進める。

    そんなチョキに勝てるグーは二文字。あまり進めないけれど、相手のリードを防ぐのに役立つ。良くできたゲームバランスですね! 以上、三浦碧でした!」
武田:雑談で終わっちゃったよ。パインに触れることなくグミ・チョコレート・パインの雑感で終わっちゃったよ。
三浦:「さて、皆さん。『チョコレイト・ディスコ』といえばPerfumeの名曲ですが」
武田:「チョコレートといえば」の雛型も捨てるのかい。
三浦:「Perfumeといえば『あ~ちゃんです』『かしゆかです』『のっちです』『三人合わせてPerfumeです』でお馴染みですよね。
    私たちは『チョコミン党です』『チョコレー党です』『ミン党です』『三党合わせて連立政権です』この体制で皆様の暮らしを豊かにします!」
武田:碧ちゃん、ここに来て新規の政党と連立を組まないでよ。
   そして、その三党は一緒にチョコミン党としてまとまるべきだと思うよ。
三浦:チョコは好きだけれどミントは苦手な人とミントは好きだけれどチョコはあんまりって人の党なんだ。
武田:だとしたら呉越同舟が過ぎないかな。早々に瓦解しそうだよ。
三浦:あ! そうだ! 完君やっぱり出馬してくれない? チョコレー党から出てほしいんだ!
武田:連立組みたさに出馬要請を蒸し返さないでね碧ちゃん。なぜミント嫌いと思われたのかも謎だし。

   それに仮に僕が出馬するとして、もうひとつのミン党はどうするんだい?
三浦:最悪、自民党とか社民党とか立憲民主党みたいに民の字が入っているところに改名してもらえばいいかなって。
武田:碧ちゃん、碧ちゃんの妥協案で政党を動かせると思わないでね。

   あのね、碧ちゃん。申し訳ないけれど、今の碧ちゃんは政治家を志すにしては身に付けていないものが多すぎるよ。

三浦:そっか……。政治家になるのは無理なのかなあ……。
武田:あのね、碧ちゃん。

   さっきも言ったけれど、僕らは有名な政治家じゃなくて漫才を頑張って偉大なコメディアンを目指そうよ。
三浦:うん……。そうだね。わかったよ完君!

   私、頑張って偉大なコメディアンになる! そうしたら偉大なコメディアンになった完君が風刺してね!
武田:碧ちゃん、風刺されることが目的になってしまっているよ。
   いい加減にしようか。
二人:ありがとうございました。